ユダヤ問題のポイント(近・現代編) ― 外伝48 ― リンカーンの負の遺産
この天文学的国家借金は、ドルの発行がアメリカ国債とセットになっている関係から、つまり利子つきの国家の借金でしかドルが発行できない仕組みによる結果です。
アメリカでこの仕組みがいつから始まったのか? 外伝14で見たように、元々世界で国家に初めて金を貸付た銀行がイングランド銀行で、通貨を国家の債務で発行する仕組みを作ったのです。
イングランド銀行が国家の通貨発行権を握ったので、近代初の中央銀行となったのですが、通貨発行と引き換えとなった英国の国家債務およびその利子の支払いは、国民の直接税によるとイングランド銀行の持ち主は条件を決めていました。イングランド銀行の支配下に英国国家、そして無論民衆も組み込まれたのです。
これは国家と民衆からすれば「借金奴隷」にさせられたのです。それでここでは「英国は悪魔主義者に乗っ取られた」と表現してきたのです。
政府がその政府債と引き換えに銀行が通貨を発行する仕組みにサインすることは、政府と民衆を「借金奴隷」に落とし込む悪魔の契約書にサインしたのに等しいのです。
ところが、実際に米国も政府債とセットになったドルが発行されるようになったのです。将来永遠的に政府と民衆を「借金奴隷」とするこの悪魔の契約書にサインしたアメリカ大統領が当然いるのです。それは意外かも知れませんが誰あろうエイブラハム・リンカーンその人です。
彼はグリーンバックスで政府が直接通貨を発行する仕組みを実行しました。これは「借金奴隷開放」の道筋です。ところがその本人が、政府と民衆を銀行の「完全借金奴隷」にする「負の遺産」を残していたのでした。
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
リンカーン暗殺 〜グリーンバックス廃止・金本位制へ
グリーンバックス(緑背紙幣)の発行継続は銀行家の破滅に直結します。そのためロスチャイルドたち国際銀行家たちは、グリーンバックス(緑背紙幣)の発行に対して総攻撃を行ったのですが、その最大の攻撃といおうか、トドメとなったのがリンカーンの暗殺でした。
リンカーンは1865年4月14日、フォード劇場で妻や従者を伴っての観劇中、俳優ジョン・ウィルクス・ブースに至近距離から拳銃で後頭部を撃たれたのです。リンカーンが大統領に再任の就任式から41日、南軍のリー将軍が降伏してから5日後のことでした。
その後2ヶ月足らずで南北戦争は終結します。リンカーンを狙撃した俳優ブースは、秘密結社ゴールデン・サークル騎士団に所属していたようで、ロスチャイルドたちとの繋がりを示す多くの情報があります。リンカーンの暗殺はロスチャイルドたちの差し金であったと見て間違いがないでしょう。
リンカーン暗殺後、直ちにロスチャイルドたち国際銀行家たちは既に支配下においていた米議会を動かし、グリーンバックスを葬るべく、そして米国の通貨の完全支配に向け行動に出ます。『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ』P85に次にようにあります。
この当時まで、アメリカは多くの銀を持っていて、金銀複本位制を取っており、大量の銀貨が市場に流通していたのです。国際銀行家にとっては不換紙幣のグリーンバックスは当然ですが、大量の銀貨の存在もコントロールが難しいものだったのです。
そこで、米国の通貨を完全に支配して管理下に置くために、グリーンバックスの廃止と共に銀貨をも廃止しての金本位制がその狙いとなっていたのです。
銀貨廃止は次回にでも見るとして、「通貨緊縮法」について『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ』は続けて次のように語ります。
通貨緊縮について『闇の世界史』p171でも、1866年に一人あたり50.46ドル流通していたドルは、10年後の1876年末には全体で6,525億ドル一人あたり14.6ドルに縮小したと指摘。その上で現金投資で22億4500万ドル以上失われ、それが通貨を縮小し貸付制限した銀行家の利益となったとしています。
南北戦争の勝者はやはり国際銀行家であり、敗者はアメリカ国民全体だったのです。
永遠の敗北 〜ドルの発行は米国債とセットに
実はアメリカ国民全体の敗北自体は、南北戦争中のリンカーン政権下に既に決定していました。それは60万人以上の犠牲を出した当時のアメリカ国民のみならず、現在に至る未来のアメリカ国民の敗北です。アメリカ国家と国民がその将来においても永遠的に負わなければならない、とてつもない「負の遺産」にリンカーンは署名していたのです。
それは「国立銀行法」です。この「国立銀行法」について『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ』では、それを「致命的な妥協 1863年「国立銀行法」」との題で記述しています 。担当した財務長官サーモン・チェイス自身が次のように語ったとしています。
P84で次の記述がされています。
当時のアメリカ各地では銀行、鉄道会社、ホテルなどがおよそ1万種類のさまざまなドル紙幣を発行し、通貨は不安定な形で流通していたが、この法律は、政府が国立銀行(National Bank)に対して、統一した標準銀行券の発行許可を与えたものであり、国立銀行が事実上アメリカの国家紙幣を発行することになったのである。
いちばん重要なことは、これらの国法銀行がアメリカ政府債を銀行券の発行の準備金に充てたことである。実際、アメリカの貨幣発行と政府債はセットになり、政府は永遠に債務を返済できなくなったのである。」
まさにこの「国立銀行法」の要は、ドルを発行するためには政府債を同時に発行しなくてはいけない点です。同法の成立で未来永遠に、米政府はドル発行のたび同額の債務を負い、利子に追われることになったのです。借金でしかドルは発行できなくなったのです。
イングランド銀行の再現 〜アメリカ完全借金奴隷に
「国立銀行法」について『闇の世界史』では、ロスチャイルド兄弟商会の長とニューヨークのイッケルハイマー・モートン・アンド・ヴァンデルグールド商会の1863年の書簡のやり取りが記載されています。これを読めば「国立銀行法」がいかに最初から欺瞞に満ちた邪悪な法案であったかを読み取れます。
まず「国立銀行」と出ていますが、実際はドルを発行するため設立される銀行は民間銀行です。つまり国営や公営と無関係の私有企業です。
ニューヨーク側がロスチャイルドに宛てた書簡には
とあるのです。
更には、この書簡にはこの私企業が政府債から利息を貪り、貸付から貸し渋りまでやりたい放題できることが記されています。
一方、ニューヨーク宛のロスチャイルドの書簡には「この法律はまちがいなく英国銀行協会によって立案された計画に基づいて起草」とあります。「国際銀行家はイングランド銀行をアメリカで複製する陰謀をようやく実現した」(『ロスチャイルド、通貨強奪の歴史とそのシナリオ』)わけです。
リンカーンはグリーンバックスの発行で「借金奴隷解放」の道筋を示しました。しかし現実には、彼はアメリカ国家をその民衆を、銀行家の永遠の「完全な借金奴隷」とする道に入れたのです。
『闇の世界史』等が記すように、彼は大統領再選後、この「国立銀行法」を廃止や抑制するつもりでいたが、暗殺され、それが叶わなかったのかも知れません。しかしどう言っても事実として、国際銀行家は1864年から現在まで、アメリカを借金漬けにしてその利子を貪ってきたのです。