地球ニュース:イスラエルが切望するアルマゲドン 1/2
ここ数週間、シリア北西部のイドリブで偽旗の化学攻撃が演出されるのでは、とシリアやロシアが先回りして情報を発信し、欧米諸国をしきりに牽制していました。しびれを切らしたアメリカが、化学攻撃なんぞなくても進軍すると言い出す始末。
こうして世界中がイドリブを注視する中、今週初めにイスラエル軍がシリアの別の都市を空爆したのです。ここ数年何百回とやらかしているのでそれ自体は目新しいことではないのですが、今回はロシア軍の航空機が撃ち落とされ、すわ第三次世界大戦勃発かと緊張が走る事態に(※米軍を含め、そもそも一回でも他国を好き勝手に攻撃して戦争にならないのが意味不明な状態ではありますけど)。
この件について色々調べている内に、ブラックストーン・インテリジェンスのジェイク・モーフォニオス氏の動画2つ(こちらとこちら)を見つけまして、分析力も情報量も大変素晴らしかったのでそれを中心に、他の情報源も総合して現状を御紹介することにします。
今日はその経緯を、明日は公式見解の矛盾点を解説していきたいと思います。
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
イスラエルのシリア空爆
今月17日月曜日の夜、シリアのラタキアという港町から35キロ沖でロシア空軍の電子情報収集機Il-20が撃墜されました。
イドリブにて、事件の数時間前にロシアがトルコと合意した非武装地帯(※実行するのは10月15日から)および武装勢力の動向を監視し、ラタキア市南東にあるロシア軍のフメイミム空軍基地へと戻る直前のことでした。
搭乗していた15名のロシア兵が死亡しています(※速報時には「14名」とありましたが、その後「15名」に訂正されました)。複数の記事で「非武装」の航空機と強調してあったので、迎撃するなどの手段は不可能だったのだと思います。
さて犯人はと言いますと、この当時、イスラエル空軍のF-16戦闘機4機がスタンドオフ攻撃をこの場所で繰り広げておりました。
恐らく2015年秋の話し合いだったと思うのですが、ロシアはイスラエルとイランがシリア領土で繰り広げる武力衝突をなんとかしようと、せめてシリアに進撃する時は事前に通知をするように、との約束をイスラエルから取り付けていました(※そもそも他国に侵略するなよ、って言いたい所ですけど)。
で約束に則り、イスラエルはダマスカス空港近くのイランとヘズボラを攻撃すると17日21時59分にロシアへ通告し、その一分後にラタキアの発電所などへ攻撃を開始した訣で……もうこの時点で、理屈が合いません。
攻撃の時系列
そしてこちらがジェイク・モーフォニオス氏:
この動画の情報によるとシリア軍が空爆の第一撃をレーダー感知したのが現地時間21時48分。ラタキアに着弾したのが21時51分。その1分前の21時50分にシリア軍がミサイル迎撃に動き出したそう。53分にはラタキア市のフメイミム空軍基地とタルトゥース市の空軍基地にあるロシア軍の防空システムも参加。53分から58分にかけてフメイミム空軍基地のS-400ミサイル防御システムが作動開始。つまりロシアや欧米の発表している21時59分の“1分前”通告ですら、事後だった可能性があります。
そして22時06分からシリア軍もS-200ミサイル防御システム(※後で再び出て来ますので覚えておいてください)を使用開始。その5分後、22時11分にIl-20が撃ち落とされました。なのにイスラエル軍は22時45分まで平然と攻撃を続けています。
多分、情報元になったのは以下のツイートでしょうか:
またこれをリツイートしたツイッター界隈で有名なシリアンガールさんによりますと、4月24日にはイスラエルの強硬派アヴィグドール・リーベルマン国防大臣が「もしシリアでロシアのS-300防空システムがイスラエルを標的として使われたら攻撃する」と発言したらしく(いや、そもそもお前がシリア上空に侵略して来んなよ、って話なんですけどね、ええ。パレスチナ人に対してアウシュビッツよりも酷い民族浄化を平然と行っている相手には常識は通用しません)。
ということでこの空爆自体、イスラエルは最早イドリブでの偽旗化学攻撃を待たずして第三次世界大戦に突入したがっているとしか思えない暴挙だったのです。
ちなみに9月10日から11日は、ユダヤ教の新年祭ローシュ・ハッシャーナーの日です。そして9月18日がヨム・キプルという贖罪の日。
こちらのブログによると「新年の日から10日間は「反省の10日間」と呼ばれていて、神に対して自分の行いを悔い改めることになっている」そうなんですが、他国の領域に侵入して人殺しするのがカルマ精算の方法なのだとしたら、もう確実に頭がおかしいです。実態は悪魔主義で神への生贄儀式だったと解釈すれば、辻褄は合いますけど。
第三・第四・第五の勢力も参戦? (ダーイッシュ、フランス、アメリカ)
こちらのまとめによると、ラタキア市や近郊のタルトゥース市はどちらも大きな港町。イスラエル軍による空爆で、勿論地上のシリア軍にも死傷者が出ています。
更に、地上ではシリア反対勢力、要するにISIS、もっとはっきり言うとCIAやモサドやMI6が訓練して送り込んだ“テロリスト”連中もシリア軍に地上戦を仕掛けており、モーフォニオス氏は時系列的に見て、イスラエル軍空爆とISISが事前に示し合わせた可能性が非常に高いと結論付けていました。
おまけにIl-20が連絡を絶った同じ時間帯には、シリアの元宗主国フランスの最新フリゲート艦オーベルニュがシリア沖から巡航ミサイルを何発も発射していたことがロシアの空域管制システムに記録されています。イスラエル軍の空爆を援護していた可能性がありますが、仏軍は関与を完全否定:
モーフォニオス氏はオーベルニュのすぐ横にイスラエル軍のドルフィン級潜水艦が隠れており、仏軍がミサイルを発射したように見せかけたのではないか、とも推理していました。
何にせよ超怪しいのが、すぐさまCNN局が米軍からの“匿名”タレコミ情報により(※フェイクニュースCNNはこのところのトランプ政権批判でも都合のよい匿名情報ばっかりなので、もうこれだけで怪しさ満載)、シリア軍のS-200対空ミサイルシステムがイスラエルのF-16戦闘機を撃ち落とそうとしてIl-20を誤爆したのだ、と報道した点。ペンタゴンも同じことを主張しています。
確かこの時、ロシア軍はまだIl-20は行方不明扱いで捜索中だと言っていたんですけどね。しかもフランスとイスラエルが現場にいた、と名指しで疑っていました。なのにアメリカはいち早く、シリア軍が犯人だと発表してきたのです。しばらく沈黙していたイスラエルのネタニヤフ首相もしれっと同じ説を唱え始めました。
ですが奇妙です。S-200はロシアがシリアに提供した技術でして、だったらロシア機はレーダー上で「敵」と表示されんだろってことなのですよ。シリア軍がいくら戦闘経験が無くて、平和ボケ極まれりなお馬鹿さんだったと仮定しても、レーダーに味方と映っている所に撃ち込みます?
一応、このイラストのようにイスラエルのF-16はロシア軍のIl-20機をカモフラージュとして利用して、見事その陰に隠れていたって話なんですけどねぇ……それでも矛盾がありまくりだというのは明日詳しく御説明します。
ロシアは孤軍奮闘状態
ロシア国防省のセルゲイ・ショイグ大臣は火曜日朝、イスラエルのリーベルマン大臣に電話で「このような行為に対して報復なしでいることはない」と抗議したそうです。ただし、以下の黙祷を捧げる頃には、やはりアメリカの発表「シリアのS-200による誤爆」説を採用してるんですよ。すっごい不服そうな顔していますけど:
ショイグ大臣を宥めたのはプーチン大統領だったと言われています。しかもその後、プーチンさん自身が「一連の悲劇的な偶然の状況」が積み重なった結果、つまり事故だったと更にトーンダウンした声明を発表しました。
……いやいやいや、そこで御大将が引きますか! とツッコミたくなりますが、ロシアはワザとアメリカの見解に乗っかったのではないかと見られています。
昨年11月24日にも、トルコ軍によりシリア上空でロシアの戦闘機が撃ち落とされました。そしてその時のトルコもNATO軍の介入を当て込んでいたようですが、ロシアは外交で解決を図っています。
今回冒頭のイドリブを巡るトルコとの非武装地帯設置も、イドリブの無辜の市民がイドリブ外へと逃げられるように、というだけでなく、アルヌスラだのアルカイダだの反政府勢力にも逃げ出す猶予を与えるための配慮でした(※欧米が執拗にイドリブ参戦の機会を伺っているのは、自分たちが折角育てたテロリストをロシアとシリアに殺されたくないのが理由の一つ)。
つまり、ロシアは第三次世界大戦への挑発を回避すべく、そらもう涙ぐましい努力を重ねているのです。
明日の後半では、この公式見解の矛盾点やイスラエルのアルマゲドン構想との絡みを見ていきたいと思います。
文・Yutika