希野正幸のインフォブログ

興味を持った情報を選んで発信しています。

年金問題の処方箋 全ての国民が潤う社会へ

年金問題、景気回復への処方箋
 
 行政サイドは年金支給額削減の方向で動いている。これは、行政サイドが年金制度の破綻を危惧しているからに他ならない。年金制度破綻は財源<支給額になった時に生じる。年金制度破綻を防ぐには常に財源>支給額の状態を維持し続ける必要がある。この不等式を安定して成立させるには財源を増やすか支給額を減らせばいい。

 支給額を減らすのは本末転倒である。年金制度は国民が安心して老後を暮らすために設立されたもの。支給額を減らしてしまってはこの設立目的を果たせなくなる。昨今の行政サイドの動きは年金制度の設立趣旨の全否定であり国民の納得は得られまい。

 したがって、年金制度の安定的維持を図るには財源の増加を考えなければならない。
 年金の財源は保険料+国庫負担+運用収入である。
 運用収入は現在の不景気・低金利の情勢では期待できない。運用収入が増えるには好景気・高金利が実現されねばならない。
 国庫負担はすなわち国民から徴収される税金である。非正規雇用、低賃金雇用が横行する中での増税は国民に多大な負担を強いる事になり、現実的ではない。安倍政権が消費税率の引き上げを見送ったのも当然と言える。
 企業は今や世界を相手に戦うのが当たり前になっている。日本の法人税は世界基準から見るとまだまだ高い。法人税増税を行うと企業の国際競争力を削ぐことになり、日本経済の低迷につながる。したがって、法人税増税による国庫負担増も危険である。
 非正規雇用、低賃金雇用の横行で国民所得が下がる中で所得税の増収も期待できない。非正規雇用、低賃金雇用の横行で国民の消費マインドは冷え切っており、消費税の増収もこれまた期待できない。消費マインドが冷え切った中での法人税の増収も期待できない。

 保険料の増収は可能か?保育施設の拡充、保育料補助の拡大、児童手当の増額で出産増を導出し、将来の保険料支払い者の増加を狙う方法もあるが、これは国民の平等を脅かす。世の中には子供を産まない人、産みたくても産めない人がいる。こういう人々を置き去りにする政策は憲法の理念に抵触する可能性がある。
 保険料のアップはどうか?これも国民の多くが非正規雇用、低賃金雇用で喘ぐ中で強行した場合、多くの国民を窮地に陥れる。保険料負担世代と年金受給世代の対立も生み出しかねない。

 こうして見て見ると保険料、国庫負担、運用収入の低迷に共通するキーワードがあることが見えてくる。不景気である。不景気だから金利は上がらない。不景気だから企業の収益は上がらない。だから、法人税の増収は期待できない。不景気だから企業は従業員を非正規、低賃金で雇用せざるを得ない。だから、所得税の増収は期待できない。不景気のために低所得に喘ぐ国民は消費活動を行えない。だから、消費税収入は増えない。企業も儲からない。

 不景気さえ打破できれば全ては好転する。不景気を打破する起爆剤はどこかにないか?実はある。2016年度の上場企業の営業利益は過去最高を記録し、これに伴って上場企業の内部留保も大幅増となっている。不景気対策で人件費を削りに削りまくった成果である。
 企業はこのような営業利益の増大が持続不可能であることに気づいているのだろうか?人件費を削ったということは人員削減、給与削減、正規雇用非正規雇用への転換を図ったということである。つまり、安定した収入を得ていた労働者を減らし、多くの失業者、低賃金労働者を生み出したということである。これにより、多くの消費者が消えた。
 確かに営業利益の増大は販売費・一般管理費(要するにこれの大部分は人件費)の削減によっても可能だが売り上げ総利益の増大によって営業利益の増大を狙うのが企業の存在理由ではないのか?
 営業利益が上がれば株価は上がる。株主総会での株主の文句に怯える必要はない。だが、売り上げが伸びない限り、株価の高値安定は長続きしない。
 売り上げを伸ばすにはどうしたらいいか?太りに太った内部留保を人件費に投資すればいい。安定した十分な収入を得た労働者が増えれば、彼らはたちまち良質な消費者に変貌し、会社に利益をもたらす上顧客になってくれる。
 こうして国民の所得が増えれば所得税が増収する。保険料は保険料支払い者の所得増に伴って増える仕組みなので保険料収入も上がる。国民の所得向上で消費が上向き、景気が上向き、企業の売り上げは増える。法人税収入が増える。消費税収入が増える。金利が上がる。

 こうして、保険料、国庫負担、運用収入全てが上向き、年金の財源が潤うことになる。こうして年金制度は安泰となる。安倍政権は企業の営業利益を上げることによって、株価を上昇させ、年金の運用収入増を図ることにより年金財源の安定化を目指している。これでは保険料収入と国庫負担の増は見込めない。株主が喜ぶだけで、国民へのメリットはない。景気も上向かない。日銀のインフレターゲットの達成もままならない。
 
 全く有効活用されず「死に金」化している企業の内部留保の有効活用こそ、国民も政府も企業もハッピーになれる有効な処方箋である。