希野正幸のインフォブログ

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地球解放後の政策をどうするか? その1 貨幣経済をどうコントロールするか?

 私は海外の通貨政策には疎いので、日本のケースについて考察してみたいと思います。日本銀行の黒田総裁はデフレに喘ぐ日本経済を立て直すため、インフレ目標を掲げ、異次元金融緩和政策を実施し、大量の日本銀行券を市場に投下しました。しかしながら、効果はなかなか現れません。
 どうしてでしょうか?貨幣は人体組織に例えるならば、血液に相当することにはみなさん異論はないと思います。適量の血液が常に流れ、体の隅々にまで行き渡っていなければ、人体の健康を保つことはできません。
 血液が体の隅々に流れるにはいくつかの条件が揃う必要があります。その条件を私なりに以下にまとめてみました。
 
①十分量の血液が供給されている。
②血流をもたらすポンプすなわち、心臓が正常に作動している。
③血管に狭窄や詰まりがなく、血液が行き渡らない場所が存在していない。
④大量の血液を必要としてそれを独占する巨大な癌細胞が存在していない。
 
 日本銀行には新紙幣を印刷して市場に投下する権限を持っています。つまり、日本銀行は日本国に血液そのものを供給する造血細胞の役割を担っているのです。黒田バズーカがさんざん投下されていますから、日本銀行は造血細胞としての役割を十二分に果たしています。しかし、いくら血液そのものが大量に供給されても、上記の②~④の条件が満たされていないならば、貨幣経済は正常に作動し得ないのです。
 日本銀行の努力にも関わらず、景気観が一向に改善する気配を見せないのは、日本銀行の所掌範囲外である②~④の機能不全であることが原因と推察できます。
 日本政府は日本国憲法の精神に則り、全ての国民の健康で文化的な必要最低限の生活を保証すべく、各種社会福祉政策を実施しています。生活保護制度、国民皆保険制度、老人福祉制度、障害者福祉制度など、他国に較べると日本の社会福祉制度は充実していると考えられます。したがって、日本の場合、③は条件を満たしているといっていいでしょう。
 問題は②と④です。日本の場合、②の役割は民間企業が担っています。民間企業が稼いだ利益を設備投資や賃金に回すならば、設備投資は他の企業の利益に結びつき、好景気の循環に繋がるでしょう。そして、賃金に潤沢な資金が供給されるならば、各国民世帯に豊富な資金が行き渡ることになりますから、各国民世帯は強力な消費者に変身し、活発な消費活動を展開することでしょう。そうすれば、農作物や酪農畜産製品や魚介類がたくさん売れることになります。第一次産業従事者が潤います。そして第一次産業従事者が強力な消費者に変身するという好循環が生まれます。また、第二次産業第三次産業の製品も活発化した消費活動によって、利益の底上げがなされることでしょう。そして、政府の税収も上がり、各種政策に潤沢な予算をつぎ込めるようになります。全てが好循環になるはずです。
 しかし、そうはなっていません。なぜでしょう?それは企業がこぞって大量の内部留保を抱えているからです。つまり、大量の血液を自分の命脈を保ちたいがために独り占めして溜め込んでおり、多くの企業が癌細胞化しているのです。心臓としての機能を発揮することを放棄しているのです。
 さらに、企業はデフレ下の厳しい市場を生き抜くために、間違った判断を下しました。コストカットに走ったのです。設備投資を極力抑え、人員をカットし、正社員の非正規雇用化を図って働く労働者の一人当たりの賃金を低く抑えることにより、必要経費の支出を極力絞ることによって利益を生み出す方向にシフトしてしまったのです。
 これでは市場が活況を呈するはずはありません。設備投資が抑えられるのですから内需は拡大しません。人員カットで失業者が増え、失業者が再就職しようにも非正規雇用しかなく、不安定な低賃金労働に従事するしか道はありません。
 これでは多くの労働者が強力な消費者になることはできません。ひたすら不安な将来のために雀の涙のようなお金を必死に貯蓄に回すのみです。これでは市場は回りません。景気観は回復しません。
 巨大な内部留保と預貯金を元手にカバール金融企業が株式投資を行い、株価が上がってカバール金融と株式投資を大々的に行えるごく一部の富裕層が肥え太るだけです。株価は上昇するものの、一般庶民の苦しい生活は一向に改善しないのです。
 これが庶民に全く好景気を感じさせない株価フィーバーの空騒ぎの正体です。
 では、闇の勢力が排除された後、どのように貨幣経済の好循環を誘導したらよいのでしょうか?

 私は次の二つのルールの導入を提案したいと思います。
①利益の内、ある一定割合以上の内部留保の積み上げを禁止する。
②利益の内、ある一定割合以上を賃金に振り向けることを義務化する。
 
 ①で内部留保という流通しない死に金の過度の蓄積を制限し、企業が外部へ貨幣を放出するように仕向けます。企業は余剰資金を大量に内部留保できずに投資に回さざるを得ません。国債や株式への投資オンリーは元本割れのおそれがあり、ある程度は設備投資に回ることになり、貨幣の好循環が期待できます。
 ②で利益のかなりの部分を賃金として回すならば、企業が多数の労働者を高賃金で雇うことになり、一般の人々に好条件の就職機会が開かれ、高賃金を得た労働者は強力な消費者となって、活発に消費活動を行い、結果として第一次産業従事者も企業も利益を積み上げることとなり、社会全体の好景気の到来をもたらすでしょう。
 景気が過熱してインフレが余りにも進み過ぎる懸念が生じるならば、①と②のバルブを少しし閉めればよいのです。
 自由主義経済の美名のもとで、最初から資金をたんまりと持っているカバールたちの一人勝ちとごく一部のカバール高位者への資金の集中をもたらしてきたシステムがイベントの金融リセットで葬り去られた後は、公平なルールのもと、労働者も第一次産業従事者も企業もみんながWin Winの関係になれる貨幣経済システムを導入していきたいものです。