希野正幸のインフォブログ

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世の中のお金の価値を変える「RV/GCR」~その3~

ここで、再びカバール君に登場してもらって説明していきたいと思います。

バール君のいとこのイルミ君は、裕福な家庭の子どもばかり通う、山の手小学校の生徒でした。

イルミ君はその山の手小学校で、カバール君と同じようにお金を貸して小遣い稼ぎをしています。

イルミ君の周りはみんな裕福な家庭の子どもばかりで、貸したお金の取りっぱぐれが少ないので、1%という安い金利で貸しても十分に利益を出すことができました。

それに比べて、カバール君の下町小学校は貧しい地区にあったので、当然、貸し倒れや踏み倒しも多く、利益を確保するために金利は10%と高額にしないといけません。


イルミ君はそこに目を付けて新たな金儲けの方法を思い付きました。

イルミ君の友達に「僕にお金を預ければ金利5%で運用してあげるよ」と言って回ったのです。

イルミ君の新しい金儲けの方法は、5%の金利で集めたお金をカバール君に貸して8%の金利を取って、3%の差額を儲けることでした。

バール君はそれを下町小学校の生徒に10%で貸すと2%の儲けになります。

山の手小学校では金利は1%が相場なので、イルミ君の提案は山の手小学校の生徒にとっても非常に魅力的なものでした。

イルミ君の友達は、お金が余っている人ばかりなので、借りるより貸したい人のほうが多く、逆にカバール君の友達は、お金を借りたい貧しい人々が多かったので、この仕組みは大変うまくいきました。


この仕組みがうまくいったのには他にも理由があります。

イルミ君の友達はお金を持っていますが、下町小学校のようなガラの悪い人たちにお金を貸すノウハウを持っていませんでした。

反面、カバール君はノウハウはあるけれども、周りが貧しいのでお金を集めることが難しかったのです。

そこで、いとこ同士の両者が持っている長所が結びついたことが成功のカギでした。


また、もう一つ重要だったのは、イルミ君が友だちからお金を集めるときに、最終的な貸し付け先が下町小学校の生徒ということを隠して金利の高さだけをアピールしたことでした。

おおっぴらに下町小学校にお金を貸すと言うと、みんな尻込みしてお金を出さないからです。

イルミ君にお金を預けた人たちは、実はそのことを薄々わかっていましたが、金利の高さが魅力で見て見ぬふりをしたのでした。


しかし、ある時、転機が訪れました。下町小学校の近くの工場が閉鎖されることになって、将来、下町小学校の生徒の親たちがたくさん失業して、カバール君への返済が滞ることが予想されたのです。

この噂を人づてに知ったイルミ君の顧客たちは焦りました。そして、今のうちに元本を回収しておこうとして、次から次へとイルミ君に返済を要求したのです。

イルミ君とカバール君は真っ青になりました。

何故なら、お金はすでに右から左へと、下町小学校の借り手にいってしまっているので、手元に現金を持っていなかったからです。

そんな時は、普通であれば現金がなくても、担保を売却してお金を作るのですが、カバール君は顧客が貧しいためもともと価値の無い担保ばかりを取ってお金を貸していたので、それもできなかったのです。

結果的に、カバール君とイルミ君は破産してしまいました。

彼らが破産したことで、下町小学校の生徒は2度とお金を借りるができなくなった上に、借金だけが残って、さらに貧しくなりました。それに、二束三文とはいえ、みんな自分の大事なものをカバール君に預けていたので、結果的にそれが返ってこなかったのは大ショックです。

山の手小学校の生徒もお金が回収できなかったので大損しました・・・。


ここまでで、もうお気づきの方もおられると思いますが、このお話はリーマンショックを題材にした物語です。

ここで前にお話しした「信用創造」を思い出していだたきたいのです。

この話では仮に、カバール君の取った担保の価値と、貸付額の差が信用創造されたお金と考えてください。

そして、下町小学校の世界では、何もないところからお金が出てきて、一時的にみんな裕福になった様な気がしたのもつかの間、すぐにジェットコースターのように不幸のどん底に転落してしまいました。


(注:イルミ君が現金で貸したのであれば信用創造と言えませんが、担保の裏付けがない、また、ある社会で一気にお金が増えた、という意味で、お金の性質として信用創造的です。あくまでたとえ話として考えてください)

では現実の世界に話を戻しましょう。

ではなぜ、お金がふえすぎるとさまざまな問題を引き起こすのでしょうか。たとえ話の小学校の世界であれば、一時的に懐が豊かになってその後しぼんでしまってがっかりした、で済みますが、現実世界では増えすぎたお金が問題を起こすうえに、いろいろな副作用が生じます。

リーマンショック時の副作用は不動産価格の高騰してかつ下落したことと、その後に起きた不況です。信用創造で過剰に作られたお金はいつにまにか消えて、しかも借金だけ残ってしまった結果、多くの人が破産に追い込まれました。(古くは90年代のバブルの崩壊も同じです)

そして、信用創造で作られたお金が一気に消える、信用収縮という現象が経済全体に不況という深刻な影響をもたらしました。その後、長引いた悪影響の数々は、説明しなくても実感でお判りのかたも多いことと思います。

ではここで、問題点をまとめます。

・信用で作り出されていくお金はどんどん自己増殖するため、一旦増加が始まると抑制が効かない。

・ダブついたお金は、金利の安いところから高いところに流れていって、流れた先で破たんを起こし経済を破壊する。

・担保の裏付けのないお金はそもそもがバーチャルなので、何かのきっかけで簡単に消えてしまい、消えることによって経済を破たんさせてしまう。


そして、カバール君のたとえ話でもお判りいただけたかと思いますが、経済の強いところは金利が安く、弱いところは金利が高くなる傾向にあります。

つまり、現代のグローバル化された世界では、金利の安い先進国で信用創造されたお金が、金利の高い、経済の未発展な貧しい国へと流れて行って、その先で猛威を振るってハイパーインフレ等を起こしたりした挙句、破たん状態に導いて経済を破壊してしまいます。(これはバブルの崩壊とは少ししくみが異なりますが、引き起こす原因になっているのは同じ種類のお金です)

その陰で強欲な国際資本は、破たん後のタイミングで乗り込んで行って、破たんした結果、格安になったその国の天然資源や不動産を買いたたいて抑えることでさらに儲け、一方、破たん先は二重に痛めつけられさらなる打撃をこうむるのです。

さらにここでIMFが善人面でしゃしゃり出てきて、お金を貸し付けて救うふりをして、その後の経済のコントロールを手にし、後々にわたって、骨までしゃぶる構造を作りあげます。

こうなってしまうと、その国はかごの中の鳥と同じで、それ以降はずっと彼らの言いなりになるしかありません。

貧しい国の首脳陣は、カバールの仲間に入って国民を犠牲にして自分たちだけ裕福になるか、IMFに徹底的に逆らうことで独裁国家の烙印を押され、国際社会から徹底的に苛め抜かれるかの、二択しか残りません。

そして、どちらにしても最後に得をするのは常に強欲な国際資本(つまりカバール)で、貧しい人たちはますます貧しくなる、という筋書きが完成します。

こういう悪だくみをできなくするために、金本位制を採用して信用創造ができない、あるいは、やりにくい金融システムを作る必要があるのです。