北方領土問題について、まのじの認識不足を反省:「カレイドスコープ」と「街の弁護士日記」より
9/15に、13日の東方経済フォーラムにおいて、プーチン大統領が「一切の前提条件を抜きにして、年末までに平和条約を結ぼう」と提案したことに対する安倍総理の対応が、これまでの「四島一括返還」を主張してきた日本の領土問題、平和条約締結交渉を覆したという趣旨のコメントを書きました。
その後、2つの重要な記事を拝見し、先日のコメントが読者の方々をミスリードしてしまったかもしれないと深く反省しました。
今回改めて、北方領土問題のポイントと思われることを挙げさせていただきました。
一つは「カレイドスコープ」の記事から、歴史的に千島列島は日本の領土であったものを、日本が降伏した後、米国が意図的にソ連軍を侵攻させて北方四島を占領させ禍根を作ったこと。戦後、日露が接近し返還交渉が始まると「四島一括返還でなければ交渉してはならない」というワシントンからの横ヤリが入ったこと。そのため戦後の日本は「過去に一度たりとも返還交渉をやらなかったというのが真相である」ということ。
二つ目は、街弁さんの記事から、プーチン大統領が2016年12月に来日した際、「日本がどの程度独自に物事を決められるのか」つまり、日米安保条約の枠内で日露の合意がどのくらい実現可能なのかと提起されていたこと。それに具体的に応えることなく、また北方領土に米軍基地が置かれることはないと日本側が確約することなく、日本側が平和交渉を迫るのであれば「前提条件なしで」という提案しかありえなかったこと。
そして何より、まのじが深く反省したことは、当然と思っていた「四島一括返還の要求」が、米軍の指示に従うもので日本独自の外交政策ではない、これにこだわることは、米軍の方針にいつまでも隷属することに他ならないという指摘でした。
沖縄の問題で日米地位協定の問題を学んだはずが、合わせ鏡のような北方領土問題では、すっかりその視点を失っていました。
ここに読者の皆様にお詫びいたします。
また新たに学んでいく所存!
注)以下、文中の赤字・太字はシャンティ・フーラによるものです。
そもそも、ソ連軍に北方四島を占領させたのは米軍だ。
だから、自民党は過去に一度たりとも返還交渉をやらなかったというのが真相である。
(中略)
北海道の漁業関係者は、みな知っている。
日本が降伏した後、米国の手引きによって北方四島を含む千島列島をソ連軍が堂々と占領した事実を。
そう、米軍はソ連軍を参戦させて、樺太と北方四島を含む千島列島を占領させたのである。
その目的は、ロシアと日本との間に溝をつくり、平和条約を結ばせないようにすることだ。
米軍は、戦後も日本を占領下に置いたままにするために、北方領土問題、尖閣問題、竹島問題を計画的に残したままにして、ユーラシアで日本だけを孤立させる戦略を取って来た。
北方領土問題、尖閣問題、竹島問題を利用してプロパガンダを展開すれば、いつでも日本を窮地に追い込むことができる。
(以下略)
2016年の来日の際、プーチンは、「日本が(米国との)同盟で負う義務の枠内で露日の合意がどのくらい実現できるのか、我々は見極めなければならない。日本はどの程度、独自に物事を決められるのか。我々は何を期待できるのか。最終的にどのような結果にたどり着けるのか。それはとても難しい問題だ」(「読売新聞」2016年12月14日)と日米安保条約の構造こそが問題だと指摘していた。
そのプーチンに対して、公衆の面前で自分たちの手で平和条約を締結する意思を改めて確認するように迫ったのは、安倍総理の方である。
2時間を超える遅刻を繰り返し、邪険に扱っても、それでも何度でも会談したいとまで言われれば、プーチンとしても考えざるを得ない。
もちろん、北方領土に米軍基地が置かれることは断じて容認できない。
その場で意思表明を求める安倍総理の呼びかけに答えるのは、前提を付けない平和条約という提案しかあり得なかった。
日本は、中国とも韓国とも領土問題を棚上げにして、平和条約(韓国とは基本条約)を締結してきた。
それならば、プーチンの提案にのって、平和条約を演出しても、別に悪くはないだろう。
国交回復と同時に結ばれた中韓とは異なり、通常、平和条約に盛り込まれる内容はすでに日ソ共同宣言で合意されていると孫崎享さんは指摘しているので、平和条約は見た目だけの殻のような内容になるようだが、それでもロシアとの平和条約という象徴的意味は大きいだろう。
米国覇権の後退の中で、アジアを目指すロシアと平和条約を締結して、東アジアの国として周辺諸国との間で立場を確立していくのは悪い話とは思えないのだ。
安倍総理批判に熱心なあまり、4島一括返還の外交政策を台無しにしたとする批判が左翼の側からもなされている。
しかし、こうした批判は、二つの意味で対米従属を内面化させてしまう。
一つは、「北方領土が返還された場合には米軍基地を置く可能性を否定するな」との在日米軍の方針にしたがったままでは、永久に北方領土返還は実現しないという矛盾から目を背けているし、
二つは、もともと、米国に強いられた外交政策であった4島一括返還の方針を強固に内面化してしまうことになるからである。