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サーティワン アイスクリームが “元日” に1年で一番売れる理由

オリコン

 日本上陸から今年で45周年を迎える日本最大のアイスクリームチェーン「B-R サーティワン アイスクリーム」。アイスと言えば初夏から夏にかけて売れるイメージだが、サーティワン アイスクリームが1年を通して一番売り上げが高い日は“元日”だという。なぜなのか? 同社のPR室の三橋恭さんに聞いた。

【写真】正月の売り上げ半分を占める『バラエティパック』&人気の福袋…日本は何色?メロンフレーバーも

■『バラエティパック』+福袋で売上高アップ

 同社によると、クリスマスケーキを除くアイスの売り上げでは、GWなどの初夏が高いという。ちなみに2018年は5月5日のこどもの日で、約3億8000万円だった。だが元日は、それ以上に売り上げが高い。2018年1月1日の売上高は、約5憶7200万円を誇った。働き方改革の影響で、駅ビルやスーパー内の店舗は休業傾向にあるが、それでも3年前から同社における元日の売り上げは上昇しているという。

 好調要因について、三橋さんは2つあると話す。一つ目は、好きなアイスを6個か12個持ち帰ることができる『バラエティパック(VP)』の売れ行きだ。「『VP』は、お正月のだんらんで食べていただくのにふさわしい商品なのだと思う。通常、『VP』の売り上げ金額構成比は年間を通じて15%前後だが、お正月は1日の約半分を占める。またパッケージも、お正月をイメージしたデザインに替わるので、好評いただいているのかなと」(三橋さん)

 二つ目は、福袋の売り上げだ。店舗によって多少値段は異なるが、2000円の福袋の場合、同額分のアイスクリームギフト券に加えてオリジナルグッズも入っており、お得な商品となっている。「福袋を目当てにいらっしゃるお客さまは、『VP』などのアイスも同時に購入されることも多いため、結果的に一人当たりの客単価が高くなるのだと思う」(三橋さん)

 とくに元日の売り上げが高いのは、郊外店舗だ。2018年の元日、全国第1位の売り上げを誇ったのは、奈良県イオンモール橿原(かしはら)店。売上高の内訳は『VP』などのアイスが約83万円、福袋は120万円だった。確かに年末年始は故郷に帰省し、家族や親戚と過ごす人が多いため、同社が販売する色とりどりのアイスや詰め合わせの『VP』は、お正月にピッタリな商品なのかもしれない。

バブル崩壊後に売り上げ低迷も、加盟店ファーストで好調に

 そもそもサーティワン アイスクリームは米国発祥のアイスクリームチェーンで、本国では「バスキン ロビンス」の名で知られる。現在、世界52カ国に8000店以上もの店舗数を有している。

 日本には1974年に上陸。同年4月23日、東京・目黒駅前に一号店がオープンした。それまで日本のアイスクリームと言えば、バニラ・チョコレート・ストロベリーの3種類ほどだったが、31種類(正確には32種類)ものアイスを一挙に並べるサーティワン アイスクリームに、当時の日本人は驚いたという。しかしバブル崩壊とともに売り上げは減少。1998年には売上高がピーク時の半分近くまで落ち込んだ。

 そんなどん底時代真っただ中の1995年、松山和夫氏(現会長)が当時社長に就任し、抜本的な改革に着手。2000年4月には、加盟店向けアイスクリームの卸値を31%引き下げる代わりに、小売売上高に応じて支払うロイヤリティ制度を導入。新たなFC(フランチャイズ)体制をスタートさせた。また新しいデザインも導入し、積極的に改装を促進した。

 さらに本部は、従来の駅前と郊外のロードサイド型店舗を中心とした出店形態に加え、イオンを始めとする大型ショッピングセンター(SC)への出店を強力にアプローチした。その結果、キャンペーンやオペレーションが評価され、近年はSC側から出店を要請されるブランドへと成長。現在では出店数の増加で、売り上げも伸びているという(2018年11月現在で1,160店舗)。

 

■米国本社との“壁“のりこえ、日本人好みのアイスを開発

 サーティワン アイスクリームの魅力は、何と言ってもアイスの種類の豊富さにあるが、世界各地ではオリジナルのフレーバーも開発されている。例えば『抹茶』は日本で開発されたが、現在では米国でも『Green Tea Ice Cream』の名で販売されているという。

 一方、新商品は米国本社の承認・許可を受けないと販売できないため、いろいろと“壁”もあった。「1980年代に登場した『マスクメロン』は苦労しました。当時の日本での主流のメロンは、プリンスメロンマスクメロンで、ともに果肉の色は薄い黄緑色でした。一方、米国のメロンと言えば、マスクメロンの一種の『カンタロープ』で、果肉の色は夕張メロンのようなオレンジ色でした。そのため、米国本社から『マスクメロン』を販売するなら、オレンジ色に変更と指示されましたが、日本人になじみのある黄緑色で販売したいと説得し、現在の色になりました」(三橋さん)

 また、2008年に開発した『クリームソーダ』も、米国本社から色が違うと言われた。「日本の『クリームソーダ』は水色と白の組み合わせですが、米国では茶色で、味はコーラをまろやかにしたようなものなのです。米国本社からは『これはクリームソーダではない』『なぜブルーなのか?』と聞かれましたが、日本のクリームソーダの事例や資料をたくさん送り、ようやく許可を得た経緯がありますね」(三橋さん)

 ときには米国本社に対し説得しながら、日本人の生活や好みに合う商品開発を進めてきたサーティワン アイスクリーム。元日の売り上げ好調について、三橋さんは「お正月に家族そろって食べたいデザートのひとつになれたのかと思うとうれしい。『サーティワン アイスクリームに行くと、いつも楽しいことがある』と思ってもらえるように、今後も新商品の開発やキャンペーンを展開していきたい」と話している。