希野正幸のインフォブログ

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狙われる有権者たち デジタル洗脳の恐怖 日経ビジネスより転載 その三

その二の続きです。

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/100500021/092500022/?P=3

 

狙われる有権者たち、デジタル洗脳の恐怖

「操られる民主主義」の著者、ジェイミー・バートレット氏に聞く(前編)

伏見 香名子 

 “インターネットが民主主義を殺している”

この「自動広告制作マシン」の一つが、フェイスブックだと言うお話を以前伺いました。

 

バートレット氏:フェイスブックは同じ広告を自動的に、わずかに変えたバージョンをいくつも流しています。多少、人の手も加えられ、ちょっと色を変えるなど、どの広告が最も効果的かを試します。それをまた、より多くの人たちに流すのです。

 

2016年、こうしたデジタル戦略により、米英で民主主義が大きく揺らいだと言われています。

 

バートレット氏:おそらく、インターネットが私たちの選挙と、選挙制度そのものを破壊するツールだと、多くの人が初めて気づいた年だったでしょう。突如として、複雑な技術を用いて有権者を狙ったケンブリッジ・アナリティカのような、データ分析企業が登場しました。

 

 実際、近年多くの選挙戦で、こうした技術が用いられてきました。(ロシアは)インターネットを使い、米国の選挙介入にも成功したのです。これは特筆すべき事象でしょう。様々な問題が明るみになり、ハイテク企業に対する疑問の目が徐々に向けられ始めていましたが、(2016年に)これは大問題だ、と認識されるようになりました。

 

今回の著書の原題は「市民対テクノロジー」(The People vs Tech)ですが、その「戦い」とはどんなものですか? また、副題は「インターネットが民主主義を殺す」ですが、本当にそうなのでしょうか。

 

バートレット氏:言葉を介さない静かな戦争が、デジタル技術と民主政体との間に起きていると思います。インターネットを制し、究極的に社会を動かしているのは、一体誰なのか。(シリコンバレーの)デジタル企業や民間企業なのか、それとも、民主的に選ばれた政府なのか。

 

 民主的に選ばれた政府は、この戦いに勝たねばなりません。しかし、政府の動きは非常に遅く、政治家の顔ぶれも数年で変わります。民主主義が苦戦している相手は、資金もあり、動きの早いテクノロジー企業です。ただ、この一年で反撃は始まっているとも感じます。

 

 意図せずに、インターネットは民主主義を殺していると思います。ネットは民主主義にとって非常に良い側面もあります。表現の自由や、新しい思想、情報へのアクセスなど、これも民主主義には大切なことで、疑問の余地はないでしょう。

 

 問題は私たちが「ネットは情報を提供する、市民のためのプラットフォームだ」と、その恩恵にのみ目を奪われていることです。民主主義はそれ以上に、健全に機能している政府や、法が保たれ、政府が決めた事が実行されていると、人々が自信を持てるものでなくてはなりません。

 

 強く健全なメディアや、人々が、きちんと情報を得た上で、互いを罵ることなく議論ができること。政治家から得たものは、規制に基づき信頼できると思えること。これらは全て、民主主義を形作るものですが、インターネットがそれを破壊しています。これが見えないのは、ゆっくり(としたプロセス)であり、つまらないことだからです。私たちは表現の自由に目隠しをされ、結果として、人々が信頼できる民主主義がゆっくりと壊されている、より大きな事態が見えていません。