希野正幸のインフォブログ

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狙われる有権者たち、デジタル洗脳の恐怖 日経ビジネスより転載 その一

 今朝、日経ビジネスからのDMに興味深い記事が載っていたので転載します。

https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/16/100500021/092500022/

  

狙われる有権者たち、デジタル洗脳の恐怖

「操られる民主主義」の著者、ジェイミー・バートレット氏に聞く(前編)

伏見 香名子

 

 2016年、世界は米大統領選挙と、英国の「EU離脱を問う国民投票」の結果に驚愕した。人々が民主的に下したはずの政治決定が、社会や経済に大きく影響し、混乱を生じ続けている。今年に入り英国では、あるデジタル分析会社のスキャンダルをきっかけに、民主主義の根幹である選挙や国民投票において、膨大な量の個人情報を基にした、いわゆる「ビッグ・データ」を使用したデジタル操作が行われたのではないか、との論争が巻き起こっている。(参考:前稿「フェイスブック騒動、驚愕の「デジタル情報戦」」)

 

 フェイスブック利用者8700万人分の個人情報が、不正にこの会社に流用されたと言う情報は日本でも報じられたが、その事実がどう自分に影響するのか、ピンとこない人が大半ではないだろうか。確かに、好きなアーティストやレストランのページに「いいね!」をつけることの一体何が問題なのか、すぐには想像しづらい。だがこうした情報は、マーケティングの手法として、広告企業などが喉から手が出るほど欲しいものだ。人々の傾向を解析し、ある商品を売り込むために、データを利用する。実際、このこと自体に違法性はなく、従来も使われてきた手法だ。

 

 しかし、もしもこの膨大な個人情報が、民主主義の根幹を成し、国政に影響する選挙や国民投票の行方を左右させるために、明確な意思を持った何者かに利用されていたとしたら、どうだろうか。

 

 筆者はEU離脱を問う国民投票で英国各地を取材して回った際、特に離脱支持者の口から出てくる支持の理由が、奇妙なほど同じ言葉で語られたことに違和感を覚えた。どんな地域でも、どんな層の人に聞いても、同じようなフレーズが繰り返し、あたかも真実のごとく語られていた。当時は、テレビや新聞などから政治家が同じ主張を繰り返したことの反映だろうと思ったが、違和感はどうしても拭い切れなかった。

 

 もしも、人々が当時、SNSを通じて毎日少しづつ、離脱派に都合の良い情報だけを、その人が最も感情的に反応するであろう傾向を把握した上で、カスタマイズされた広告を流し続けられていたとしたらーー。これはある種、民主プロセスにおける「デジタル洗脳」とも言えるのではないか。

 

 民主主義とデジタルの最前線で、今何が起きているのか。私たちは、何に着目すべきなのか。そして「アラブの春」で民主化運動を牽引したと賞賛されたSNSは、今や民主主義を破壊しつつあるのか。こんな疑問をもとに、この問題に取り組む専門家たちに話を聞き始めた。

 

 今月、日本でも出版される「操られる民主主義:デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか」を執筆した、ジャーナリストで、シンクタンク「デモス」代表のジェイミー・バートレット氏に聞く。 

 

なぜ今、新著「操られる民主主義」を書こうと思ったのですか?

 

ジェイミー・バートレット氏(以下バートレット氏):変化の速さやテクノロジーの進化、AIの台頭などを考えた時、この問題を早急に解決する必要があると感じました。今後20年以内にこの緊張関係を緩和する策を講じなければ、民主主義が絶滅しかねないと思います。

 

 この数年(問題となった)ロシアの選挙介入、荒らし、仮想通貨など。私はこれらが全て、同じ事象の一部であることに気づきました。つまり、現在とは全く異なる時代に構築された、古いスタイルの民主主義と、新しいデジタル技術とが、相容れないということです。