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安倍三選がもたらす三つの危惧。香港メディア。

安倍政権は既得権益に切り込むのではなく、既得権益を強化している。国家戦略特区など地方行政に介入し、原発輸出など企業経営に口を挟むようになった:香港メディアが警告「安倍再選」が日本にもたらす3つの危機
| アベノミクスは単なる幸運、憲法改正で経済も外交も疎かに

https://courrier.jp/news/archives/136835/

アベノミクスは単なる幸運、憲法改正で経済も外交も疎かに

香港メディアが警告「安倍再選」が日本にもたらす3つの危機

以下は、抜粋

安倍が総裁選に勝利すれば、日本は3つの問題を抱えることになる。

1、経済の不安定化
第2次安倍政権が発足したときの内閣支持率は70%に近かったが、かといって困難な問題に対処したわけでもなかった。それを考えると、現在の支持率36%の状態で、とてつもないビジョンを軌道に乗せることは難しい。

この5年以上にわたる安倍政権の経済政策にぴったりの言葉は、「錯綜している」だ。彼は有権者に対して「3本の矢」を放った。

1本目は歴史的な金融緩和政策で、内閣発足早々に実施された。次の、2020年の東京五輪に向けた建設ラッシュも財政刺激策と言える。ところが、3本目にして最重要の矢——すなわち構造改革の矢は、そのほとんどが矢筒に収まったままだ。

安倍氏は当初、労働市場の国際化と規制緩和、起業の奨励、男女の賃金格差の是正といったことを盛んに喧伝していた。
それがいまではこれらすべての刷新がペースダウンし、日本銀行の金融緩和策や円安によって改善されることを期待すると言うばかりだ。

経済政策という点で、安倍氏は幸運に恵まれた。

円の大量発行時期がちょうど世界経済の回復期に重なるというまたとない巡り合わせに乗って、日本企業の輸出高は安定的に上昇。2018年第1四半期成長率が前期比0.2%減を記録するまで、日本は9期連続の成長を続けた。

2、憲法改正で他の問題が疎かに

安倍氏がひたむきな情熱を傾けているのが、平和憲法の改正だ。
日本を通常戦力の配備可能な「普通の国」にすること。これが長年、安倍氏を突き動かしているこだわりだが、これもまた錯綜している。
コロンビア大学政治学者で日本に詳しいジェラルド・カーティス氏は「憲法改正は、彼の唯一の具体的な公約項目」と指摘する。だが、日本国民の73%はこの改憲論に冷ややかで、道のりは前途多難だ。憲法問題に集中している安倍氏が、日本経済の活性化に取り組む余裕なんてまったくないのではと疑いたくもなる。
とはいえ、トランプの大言壮語と愚鈍さが安倍氏にとって吉と出るかもしれない。トランプの奇行は、日米同盟に対する信頼をたびたび揺さぶってきた。


また、数々のスキャンダルとホワイトハウスへの執拗な捜査に怒りを募らせるトランプが、国民の関心をそらすため、ピョンヤンテヘランを攻撃することもなくはない。
これが、「安倍支持」の追い風となり、ひいては憲法第9条の改正という彼の夢を実現させるかもしれない。

3. 周辺諸国との不和、トランプ頼みの外交

中国と韓国は、ナショナリスト安倍氏が再選しても、いつもどおり冷淡な態度をとるだろう。

北京とソウルそれぞれの政府当局は、2013年の安倍の靖国神社参拝に対していまだに立腹している。日本の政界では2013年以後、靖国詣でを封印している安倍氏への評価は高いが、アジア諸国ではそうでもない。
だが、「トランプ効果」でこの力学にも何らかの変化が生じるかもしれない。といってもある日突然、中国国家主席習近平や韓国大統領の文在寅が同盟国として日本の安倍を迎えることはない。

ただ、トランプが始めた貿易戦争によって日中韓が再び話し合いの機会を持った。2018年5月、3首脳は2年以上も開催されていなかった持ち回りの首脳会談を東京で開いている。

日中韓の本格的な関係改善は、安倍外交の優先順位がどこにあるかにかかっているだろう。

トランプの友とならんとした彼の努力も、米国が発動した鉄鋼とアルミニウム、中国製品への新関税によって見るも無残に砕け散った。

その結果、安倍はTPP存続のため加盟国追加に奔走することになったが、中韓が加盟する可能性はない。
安倍氏の政策は先手型というより保守反動型で、それもトランプの出方しだいで変化する。

トランプが自動車とその部品への追加関税を発動させれば、東京の政財界からは「日本に味方しないホワイトハウス一辺倒の方針を転換せよ」という声が大きくなるだろう──政治リスク専門コンサルティング会社「ユーラシアグループ」のスコット・シーマンはそう指摘する。

そのとき安倍は、習近平のもとに飛びこむのだろうか? それはありえる。


結局、最終的に問題なのは、日本国民が安倍政権を必要としているか否かだ。

株式ファンド運用会社「ウィズダムツリー・ジャパン」のCEOで経済学者のジェスパー・コルは「安定性こそが、求められている」と断言する。
ごもっとも。だが、桜島を背景に総裁選への出馬を表明したとき、安倍氏の口からこんな重大な失言が出た。
「国民の皆さまの負託に応えていくことは、私の責任であります」
それが真実なら、経済がいまよりもっと活性化した未来を創るべく、数十年にわたって日本が蓄積してきた機会を活用することに安倍氏は100%集中すべきだろう。それこそ彼の言う「国民の皆さまの負託」だ。
それなのに彼は、いまだに戦争の過去から日本を解放する試みにしか興味がない。だが、それは賃金引き上げや競争力強化とはまるで無関係だ。

かくして、今後3年の安倍政権を評価する最良の方法は——やはり錯綜している。